DEAD MAN
原題:DEAD MAN
フランス公開:1995年05月26日
日本公開:1995年12月23日
製作国:アメリカ
言語:英語
画面:1X1.85
音響:ドルビーステレオ
上映時間:121分
配給:フランス映画社

【スタッフ】
監督ジム・ジャームッシュ
脚本ジム・ジャームッシュ
撮影ロビー・ミューラー
音楽:ニール・ヤング
編集:ジェイ・ラビノヴィッツ
美術:ボブ・ジンビッキ
衣装:マリット・アレン
キャスティング:エレン・ルイス
        ローラ・ロゼンタール
コー・プロデューサー:カレン・コック
製作:ディミートラ・J・マクブライド

【キャスト】
ウィリアム・ブレイク(会計士):ジョニー・デップ
機関士:クリスピン・グローヴァー
ジョン・スコフィールド(ディッキンソン工場の支配人):ジョン・ハート
ディッキンソン社長:ロバート・ミッチャム
セル・ラッセル(紙製の花売り娘):ミリ・アヴィタル
チャーリー・ディッキンソン:ガブリエル・バーン
コール・ウィルソン(殺し屋1):ランス・ヘンリクスン
コンウェイ・トゥイル(殺し屋2):マイケル・ウィンコット
ジョニー・ザ・キッド(殺し屋3):ユージン・バード
ノーボディ(ネイティヴ・インディアン):ゲーリー・ファーマー
女装のサリー(森の中の男1):イギー・ポップ
ビッグ・ジョージ(森の中の男2):ビリー・ボブ・ソーントン
ベンモント・テンチ(森の中の男3):ジャレッド・ハリス
ノーボディのガールフレンド:ミシェル・スラッシュ
白人交易所の男:アルフレッド・モリーナ

【ストーリー】
 蒸気機関車が西へ西へと走る。19世紀後半のアメリカ大陸。
 東部クリーヴランドから来た青年紳士ウィリアム・ブレイクの目的地は、自分を会計士として雇うディッキンソン工場のある町マシーンだ。西に進めば進むほど、車内の乗客は都会風の装いから開拓民のいでたちに、そして車外の風景も、森林地帯から平野地帯へ、焼かれた幌馬車や、インディアン(ネイティヴ・アメリカン)のテント跡や、西部開拓史さながら、景観を深めながらも殺伐としてくる。銃に前ぶれはない。一斉に轟き始めた銃声にブレイクは肝を潰す。バッファローなど、あたり構わず殺す。おそらく人間も。

 夢を抱いてやって来た夢の町マシーンだが、町には墓場のような空気が漂っている。ディッキンソン工場の支配人スコフィールドは、ブレイクがさしだした雇用の手紙を見て、2カ月も前の消印だとニベもない。ブレイクは社長ディッキンソンへの面会を求めるが、社長室にやがて姿を現したディッキンソンは、ブレイクの都会風すぎてダサい装いを見て、クリーヴランドで買ったかとからかい、いきなり彼に銃口を向ける。ここでは銃が言葉なのだ。すごすご去るブレイクの姿に支配人たちの嘲笑が響く。

 銃声が無鉄砲に響き出す夜の酒場で、ブレイクは花売り娘セルに出会った。売っている花は、彼女が紙で作ったバラの花。紙の花とセルの美しい胸がブレイクの心をうつ。セルの部屋のベッドで横たわるふたり。そのベッドには護身銃。ここはアメリカなのだ。前ぶれもなく、ディッキンソンの息子チャーリーが入ってくる。許嫁だったセルを忘れられず、変わらぬ愛を誓いに来たのだったが、ブレイクを見てチャーリーの銃が火を吹いた。銃弾は、ブレイクをかばおうとしたセルの胸を貫き、ブレイクの心臓の脇にめりこんだ。お返しに撃った1発がまぐれ当たりでチャーリーの喉に命中する。ブレイクは胸の傷をおさえて窓から逃げ出した。ブレイクを乗せたまだら毛の馬が夜のマシーンの町を駆け抜け、流れ星が飛ぶ。

 誰かの”アホな白人の鉛が!”と言うつぶやきと、胸の肉をえぐられる痛みがブレイクを揺りおこす。銃弾を取り出して命を救おうとしてくれているらしい男はインディアンだ。心臓を外れているが、銃弾を取り出せば心臓を傷つけ、魂が抜け出てしまうと、ナイフを投げ出し、”タバコはあるか?”と聞く。”吸わないんだ”とブレイクは答える。そのタバコは、インディアンの儀式として要求していたのだったが。
 インディアンは、弾丸を取り出すことを断念して薬草を胸の傷口に埋めこみ、ブレイクが馬に乗れるようにしてやって、山道を導く。

 息子チャーリーを殺され、まだら毛の愛馬まで盗まれたジョン・ディッキンソンは、西部で名うての3人の殺し屋を雇う。極悪非道のコール・ウィルソン、腕利きだが口数の多いコンウェイ・トゥイル、13才で14人殺したジョニー・ザ・キッド。それぞれに一匹狼、組むのを嫌がる3人に、ディッキンソンはお前達だけへの依頼だと、大金の成功報酬を約束し、生死は問わぬ、ブレイクを捕らえろ、愛馬も取り戻して来いと送り出したうえで、支配人を呼び、西部全域に賞金付きの指名手配書を撒く手配をさせる。

 山の中で夜、ブレイクが目覚めると、インディアンは焚火で燃える石と対話していたが、目覚めた彼に名を尋ね、ウィリアム・ブレイクと答えると飛び上がって驚き、それが本当ならデッドマンだと叫ぶ。イギリスの詩人、何十年も前に死んだウィリアム・ブレイク(1757~1827)が、今、瀕死で自分の前に現れた、白人殺しをした身で…。ブレイク本人には何が何だかわからないが、インディアンは、ブレイクの詩をつぶやきながら、まるで死者に話すように、ブレイクに毛布を掛ける。

 翌朝から、インディアンは、確信をもってブレイクの旅を案内し始める。3人の殺し屋が後を追って来ている足どりさえ察知しているふうだ。美しい野生林を通りながら、自分の名は”ノーボディ(誰でもない)”と名のり、またの名はインディアン語で”エグセベチェ(口の達者なからっぽ)”、ネイティヴ・アメリカンの数ある種族で、自分は混血、母はウンガンペパカナ族で父はアブソルーカ族、混血は生まれた時からはじかれて孤独、鹿をひとりで追っていたら、鹿のほうが同情して命をくれて、その時、英国の兵隊が来て、銃で殴られて魂が体から抜け、檻に入れられてニューヨークへ。英国に送られ、見せ物として白人の学校に入れられ、そこで本に出会った。ウィリアム・ブレイクの詩に出会って、心をうたれた。慎重に計画して、英国を脱走して、さあ、帰って来たよと言っても、同じ血の仲間は誰も信じてくれず、エグセベチェと名づけられた。だから、ノーボディさ。

 ノーボディはブレイクの回復をはかって、ある日は銃の扱い方を教え、ある日の夜は白人開拓民が3人で豆料理で火を囲んでいるキャンプに、ためらう彼を送りだす。3人の開拓民は、ビッグ・ジョージと呼ばれるリーダーと”サリー”と呼ばれる料理番が仲よくて、もう一人が排除寸前の危険なトリオ。今夜の料理もサリーが野ネズミを煮込みに煮込んだ豆味のシチュー。突然の訪問者、人間ブレイクは、久々に肉料理の素材が到着したようなものだが、間一髪、ノーボディが鮮やかに危機を救う。

 荒涼とした道の途中、500$の賞金付きで似顔絵入りのブレイクの指名手配書が木に貼られている。セルをも殺したと書いてある手配書を、引きちぎって荒れるブレイク。
 しばらく後、同じ手配書を見て憤慨する殺し屋3人。俺だけに依頼した独占契約のはずなのにとわめくジョニー・ザ・キッドを、コール・ウィルソンは冷酷に撃ち殺す。

 ノーボディは自分の用ができて、ブレイクの元から去らねばならない。夜、霊世界を透視できるようになる薬草を食べ、ブレイクの顔を見つめるが、骸骨が浮かびあがる。ブレイクの顔に、ノーボディは、ネイティヴ・アメリカンの印を化粧して、去る。

 朝、ノーボディを探すブレイクの前に、ディッキンソンの手配書の賞金目当てにライフルを携えた双生児の保安官が。僕の詩はこれだ、とふたりを撃つブレイク。夜、暗い森のなかで、自分を狙ういくつもの目を感じるブレイク。しかし、その目たちは、ノーボディが残した顔の印のおかげで、ブレイクを、ストレンジャーだが味方と認めているようだ。
 コール・ウィルソンはおしゃべりトゥイルを撃ち殺し、トゥイルの肉で空腹をいやす。
 ブレイクはあてもなくさすらいつづけ、森の広場で、一匹の仔鹿を見つける。首根を撃たれて死んでいる仔鹿。息絶えた仔鹿の血を自分の胸の傷口に合わせ、顔の印に塗って、仔鹿に添って身を横たえる。

 夜、暗いなかで何かがこんもりと蠢いている。ブレイクは銃を向けるが、蠢きのなかから飛び出して来たのは下着1枚のノーボディではないか。ノーボディは、ガールフレンドとお楽しみの最中だったのだ。再会を喜ぶふたりは、大木の林を抜けて、さらに奥地に向かう。

 奥地になればなるほど、ネイティヴ・アメリカンの村は広がっているが、白人の交易所もポツンとある。交易所のテントには、ブレイクの手配書が、最初のものから最新のものまで、罪状も賞金も増えたものがズラリと貼り並べてある。
 中には交易所の商人が一人。ノーボディがタバコを買いたいと言うと、品切れだと断りながら、ブレイクが聞くと、差し出す。印の剥げかけてきたブレイクの顔に気づき、商人は指名手配書を取り出し、これは光栄、家宝にしたいのでぜひサインをと言い、銃を取り出すが、ブレイクの彼を殺す銃弾のほうが速い。

 小舟で出発する直前、ブレイクは背後から致命的な一弾を浴びる。血が、腕を伝って河にしたたり落ちる。ブレイクの意識はしだいに遠のいていき、ノーボディが口ずさむ歌もはっきり聞こえない。
 やがて部族の村に到着する。抱きかかえられるようにして長の前に連れていかれるブレイク。人の姿も景色も、すべては朦朧とする意識のかなたで、ノーボディがカヌーを譲ってくれと交渉している。
 波の音で気がつくブレイク。インディアンの死への旅立ちの盛装をして、飾りたてたカヌーに横たわっている。ノーボディはブレイクにタバコを捧げて笑顔で別れを告げ、カヌーを水面に押し出す。”ぼくは吸わないのに”と答えるブレイク。遠ざかるノーボディの姿の向こうに、ウィルソンが現れ、ノーボディに銃口を向けている。ウィルソンとノーボディは銃を撃ち合い、ふたりとも倒れる。

 ブレイクのカヌーは大海原を漂っていく。ノーボディが連れていくと言っていた、魂が帰るところ、みんなの魂の故郷に向かって。

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