THE ELEPHANT MAN
原題:THE ELEPHANT MAN
本国公開:1980年10月10日
日本公開:1981年05月23日
製作国:アメリカ・イギリス
言語:英語
上映時間:124分
配給:東宝東和

【スタッフ】
監督デヴィッド・リンチ
脚色デヴィッド・リンチ
   クリストファー・デ・ボア
   エリック・バーグレン
製作:ジョナサン・サンガー
音楽:ジョン・モリス
撮影:フレディ・フランシス
美術:スチュアート・クレイグ
衣装:パトリシア・ノリス
編集:アン・V・コーツ

【キャスト】
ジョン・メリック:ジョン・ハート
トリーブス:アンソニー・ホプキンス
ケンドール夫人:アン・バンクロフト
カー・ゴム院長:サー・ジョン・ギールガット
婦長:デーム・ウェンディ・ヒラー
バイツ:フレディ・ジョーンズ
夜警:マイケル・エルフィック

【受賞歴】
全米監督協会選出・優秀監督賞受賞
全米カソリック協議会推薦
'80ゴールデン・アップル賞・男優賞受賞
第3回メディア賞・作品賞受賞
本年度クリストファー青銅賞受賞
第25回コーク映画祭・特別賞受賞
'80フランス・アボリアッツ映画祭グランプリ、批評家特別賞受賞
タイム誌選出ベストテン入選
ピープル誌選出ベストテン入選
ゴールデングローブ賞:作品賞・主演男優賞・監督賞・脚色賞ノミネート
ロサンゼルス映画批評家賞:主演男優賞・撮影賞ノミネート

【ストーリー】
 19世紀の末、イギリスは世界の工場として産業に文化に史上空前の繁栄を迎えていた。
 ロンドン病院の優秀な青年外科医フレデリック・トリーブスは猥雑をきわめる見世物小屋で≪エレファント・マン(象人間、象男)≫と呼ばれる男を初めて目の前にして思わず息を呑んだ。この世にこれほどまでに奇型の生きもの、いや人間がいようとは……。
 ≪エレファント・マン≫は本名をジョン・メリックといった。
 解剖学に造詣の深いトリーブスは研究したいからといって親方のバイツに交渉し、メリックを密かに病院に呼び寄せると、最上階にある隔離病棟にかくまった。
 トリーブスの学会での研究発表は異常な反響を呼んだ。しかし、メリックの奇型の原因は不明であり、治療も不可能という絶望的状況だった。メリックの推定年齢は21歳であった。
 メリックの存在はほどなく院長カー・ゴムの知るところとなり、不治の患者を病院に留めておくことはできないとトリーブスに言い渡した。だが、その前にメリックに会うことは承諾した。
 メリックは右腕が不自由で歩行も困難、しかも上唇が異常にめくれあがり、言葉も鮮明に発音できなかった。
 物も言えず知能もごく低いと思われていたメリックが聖書を読み詩篇をそらんじているだけでなく、優しく誠実な若者であることを知って院長も深く胸を打たれた。幼少の頃から逆境に生きるしかなかったに違いないメリックのどこにそんな不屈の精神が秘められていたのだろう……。
 院長の特別の計らいによってメリックは病院にいられるようになった。いま彼は初めて”家”を得たのだった。
 ある日、トリーブスはメリックを自宅へ招いた。トリーブス夫人アンは噂に聞いていた≪エレファント・マン≫の形相に強い衝撃を受けながらも、メリックを暖かく迎えた。メリックもアンの中に美しく優しかった母のおもかげを見出し、思わず涙にかきくれた。「母は美しい人でした……」誰にも見せたことのない、母の写真を手にしながらたどたどしく、しぼりだすようなメリックのつぶやきにアンは返す言葉もなかった。
 院長はタイムズ紙に投書して、メリックの苦境を救うための募金を広く読者に訴えた。メリックの人となりを詳しく紹介することも忘れなかった。
 かくして、一躍”有名人”となったエリックのもとにさまざまな階層の人びとが訪ねてきた。有名な舞台女優ケンドール夫人もその一人だったが、一方では、病院の夜警係の男のように、好奇心にかられた人びとを煽って金をせしめ、なぐさみ者にした卑劣漢もいた。そんな折も折、かねて、”金づる”メリックを病院に奪われたと思いこみ恨んでいたバイツは秘かにメリックを連れ出し、ヨーロッパ大陸へ興行に向かった。イギリス国内では当局が≪エレファント・マン≫の見世物を禁じていたからであった。
 興行を続けるあいだも虐待のためにメリックの容態は悪化し、半死半生のまま見捨てられたが、見世物の仲間たちの援助で辛うじて祖国イギリスにたどりつくことができた。
 だが、そこでも待ち受けていたのは相も変らぬ人びとの残酷な好奇に満ちた視線だった。群衆につきまとわれ、公衆便所の隅に追いつめられたメリックは思わず絶叫した。
 「わたしはにんげんだ!……どうぶつじゃない!……にんげんなんだ……」
 メリックの行方を案じていたトリーブスは思いがけない再会を心から喜んだ。
 充分な治療によってようやく体力を回復したメリックだったが、しかし病状はさらに悪化し、重態と診断されていた。
 ある夜、メリックはケンドール夫人の好意で観劇のひとときを過した。拍手をもって迎える満場の観客に向かい、トリーブスに促されるまま、ぎこちなく会釈するメリック。
 病院に戻ったメリックは、きらびやかで楽しい舞台の興奮がさめやらず、幾度もトリーブスに礼を言うのだった。その夜、ひとりになったメリックはかねてから手がけていた聖フィリップ寺院の模型を完成させ、たどたどしい手つきだが、しっかりとした字で自分の名を書き込んだ。入院以来、朝に夕に病院の窓から見なれていた、ただひとつの景色なのだ。
 そして、いつものような、うずくまって眠る姿勢をやめ、ごくふつうの人間がやるように、仰向けになって身を横たえた。だが、それはメリックには致命的な姿勢なのだ。メリックは承知の上であえてそうしたのだろうか……。

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