HIGH HEELS
英題:HIGH HEELS
日本公開:1992年12月12日
製作国:スペイン
言語:スペイン語
画面:ビスタサイズ
音響:ドルビーステレオ
上映時間:115分
配給:ヘラルド・エース、日本ヘラルド映画
スタッフ
監督:ペドロ・アルモドバル
脚本:ペドロ・アルモドバル
製作:アグスティン・アルモドバル
撮影:アルフレッド・マヨ
美術:ピエール・テヴネ
編集:ホセ・サルセド
音楽:坂本龍一
音響:ジャン・ポール・ムゲル
プロダクション・マネージャー:エステル・ガルシア
キャスト
レベーカ:ビクトリア・アブリル
ベッキー・デル・パラモ:マリサ・パレデス
レタル/ドミンゲス判事/ウーゴ:ミゲル・ボゼ
アルベルト:ペドロ・ディエス・デル・コラル
マヌエル:フェオドール・アトキン
イサベル:ミリアム・ディアス・アロカ
マルガリータ:アナ・リサラン
パウラ:クリスチナ・マルコス
チョン:ビビ・アンデルセン
TV評議員:ハビエル・バルデム
ストーリー
1989年、マドリード空港。純白のシャネル・スーツにハイヒールで着飾ったひとりの女が、落ち着かない様子で人を待っていた。
レベーカ、27歳。60年代末に一世を風靡したポップ・シンガーの母、ベッキー・デル・バラモがメキシコから帰って来るのだ。ベッキーは恋多き女だった。2度結婚し、愛人も何人かいた。少女時代のレベーカは継父オカニャとはうまくいかず、母の愛を得ようと継父に悪戯をして死に至らしめてしまう。悲しみに暮れるベッキーは、メキシコからの映画出演依頼を受けレベーカを置いて旅立ってしまうのだった。
あれから15年。母恋しさにレベーカはベッキーの真似をするようになった。母の昔の恋人マヌエルと結婚してしまうほどに。レベーカはマヌエルの経営するテレビ局の人気キャスターだ。
故郷スペインに降り立ったベッキーは、レベーカを伴って、先ずアラミーヨ広場へ向かった。そのアパートの地下の部屋はふたりが共に暮らした想い出の部屋だ。ベッキーはここを再び買って住むというのだ。そのアパートの壁に、ベッキーを真似たゲイのショーのポスターが貼られていた。彼のファンであるレベーカは、その夜のショーにベッキーを誘う。
ベッキーの名曲「別離」に乗せて妖しい踊りを見せるレタル。一目で気に入ったベッキーはレタルの左胸パットをプレゼントしてもらう。楽屋をたずねたレベーカは、レタルに愛を打ち明けられる。片やマヌエルはベッキーにレベーカとの愛が終わったことを告白するのだった。
それから1ヶ月後。
マヌエルが死んだ。何者かに銃で胸を撃たれたのだ。その夜彼と会った3人の女性が容疑者として挙げられた。その3人とは―――レベーカとベッキー、そしてマヌエルの愛人イサベルだ。イサベルはレベーカの読むニュースを手話通訳するキャスターだが、もっとよいポジションを得ようとマヌエルに取り入っていたのだ。
事件を担当するドミンゲス判事は、彼女たちに状況を聞く―――3人が家を訪ね、1人が彼と寝、1人が激しい口論をし、1人が死体を発見、一体誰が彼を殺したのか?
その日の午後、レベーカはつらい思いを押してマヌエルの死を報じるニュースを読んだ。いつしかニュース原稿から脱線し、涙ながらに告白した―――私が殺しました。レベーカはその場で逮捕された。
その夜、ベッキーは舞台に立ち、レベーカのために歌を贈った―――あなたが辛い時は私を想って、泣きたい時は私を想って……。拘置所のベッドでラジオから流れる母の歌を聞くレベーカは泣き崩れた。
ドミンゲス判事はレベーカの犯行を信じず、彼女を拘置所から助け出そうと画策する。判事の手引きで母と再会するレベーカは、本心を訴えるのだった。「私はいつもママに勝とうとして勝てなかった。オカニャを事故死させたのは私。ママは一緒に暮らそうと言ったけど、約束を破った。絶対に許せないわ」 興奮して一気にまくし立てたレベーカは、拘置所でバッタリと倒れる。妊娠していたのだ。
裁判所から釈放の許可が下り、レベーカは証拠不十分との理由で自由の身になる。家宅捜査をされて散らかったままの部屋に戻った彼女は、テレビの中に隠した拳銃を確認する。そこにドミンゲス判事から電話が入りこれから来るという。拳銃をマヌエルとの想い出のソファに隠し、判事の話を聞くが要領を得ずに感情的になってしまうのだった。
その夜レタルの楽屋を訪ねたレベーカは、ドミンゲスがレタルであることを知る。そして驚いたことに、お腹の子は彼の子であり結婚を申し込むというのだ。ドミンゲスの家に行ったふたりは、テレビのニュースでベッキーが舞台で倒れ病院に運ばれたことを知る。
ベッキーの許へ駆けつけたレベーカは真実を告白した。「愛してくれなければ死ぬ覚悟でした。私をあざ笑った彼に、夢中で引き金を引いてしまったの」 母として何もしてやれなかったと悔いるベッキーは、残りの命をレベーカに捧げようと決心する。「私が犯人です」 ベッキーは判事にそう告げるのだった。
母と娘―――ふたりの想い出の部屋で、事件の証拠品、拳銃を握ったベッキーはレベーカに抱かれて静かに息を引き取った。
―――ママといた子供の頃、ママが帰るハイヒールの靴音を起きて待っていたのよ。
やっと帰って来たと思った時に、永遠の別離が訪れるのだった……。