The Good Shepherd
原題:The Good Shepherd
日本公開:2007年10月20日
製作国:アメリカ
言語:英語
画面:シネマスコープ・サイズ
音響:ドルビーSRD
上映時間:167分
配給:東宝東和

【スタッフ】
監督:ロバート・デ・ニーロ
製作:ロバート・デ・ニーロ
   ジェームズ・G・ロビンソン
   ジェーン・ローゼンタール
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
      デヴィッド・ロビンソン
      ガイ・マケルウェイン
      ハワード・カプラン
      クリス・ブリガム
脚本エリック・ロス
撮影ロバート・リチャードソン
美術:ジャニーン・オップウォール
編集:タリク・アンウォー
衣装:アン・ロス
音楽:マーセロ・ザーヴォス
   ブルース・ファウラー
CIAテクニカル・アドバイザー:ミルト・ベアデン
コンサルタント:リチャード・C.A.ホルブルック(1991-2001年アメリカ国連大使)

【キャスト】
エドワード・ウィルソン:マット・デイモン
クローバー/マーガレット・ラッセル:アンジェリーナ・ジョリー
サム・ミュラック:アレック・ボールドウィン
ローラ:タミー・ブランチャード
アーチ・カミングス:ビリー・クラダップ
ビル・サリヴァン将軍:ロバート・デ・ニーロ
ラッセル上院議員:ケア・デュリア
ハンナ・シラー:マルティナ・ゲデック
フィリップ・アレン:ウィリアム・ハート
トーマス・ウィルソン:ティモシー・ハットン
リチャード・ヘイズ:リー・ペイス
エドワード・ウィルソン・ジュニア:エディ・レッドメイン
ヴァレンティン・ミロノフ:ジョン・セッションズ
ユリシーズ/スタス・シヤンコ:オレグ・ステファン
レイ・ブロッコ:ジョン・タトゥーロ
フレデリックス教授:マイケル・ガンボン
ジョゼフ・パルミ:ジョー・ペシ

【ストーリー】
ピッグス湾侵攻作戦の失敗
 1961年4月17日、アメリカの支援を受けた亡命キューバ人の部隊が、カストロ政権の転覆をもくろみ、ピッグス湾に上陸。だが、CIA内部の情報漏れによって作戦は失敗、CIAは窮地に追い込まれた。それから3日後、作戦の指揮を執ったベテラン諜報員エドワード・ウィルソン(マット・デイモン)のもとに、1本のテープが送られてくる。録音されていたのは、同封の写真の男女がベッドで交わした会話だった。何かに脅えている様子の男と、そんな彼を「私といれば安全」となだめる女……。彼らの声に、CIAの内通者と敵側スパイの匂いを嗅ぎ取ったエドワードは、部下のレイ・ブロッコ(ジョン・タトゥーロ)を通じて、技術部にテープと写真の分析を依頼した。その結果が、自分と家族にどれほどの衝撃をもたらすかも知らずに……。

アメリカ合衆国からのスカウト
 エドワードが諜報の道に足を踏み入れたのは、イエール大学在学中のことだった。時代は第二次世界大戦前夜。FBI捜査官のサム・ミュラック(アレック・ボールドウィン)の接触を受け、親独派のフレデリックス教授(マイケル・ガンボン)の身辺を探る任務を頼まれたエドワードは、愛国心に突き動かされるように行動し、教授を辞職に追い込んだ。さらに、大学内のエリートで構成された秘密結社スカル&ボーンズのメンバーとして、ディア島で行われた集会に出席したエドワードは、先輩のフィリップ・アレン(ウィリアム・ハート)の紹介でサリヴァン将軍(ロバート・デ・ニーロ)と対面し、戦時中の対外諜報活動に参加してほしいと誘われる。かねてから、自殺によって人生の幕を閉じた海軍高官の父(ティモシー・ハットン)の汚名を晴らすことを願っていたエドワードは、考える間もなくサリヴァンの申し出を引き受けた。
 その当時、エドワードには、図書館で出会ったローラ(タミー・ブランチャード)という恋人がいた。彼女は耳が不自由だったが、映画もダンスも楽しむ明るく優しい女性で、エドワードは、ローラと共に歩む人生に多くの夢を馳せていた。しかし、ディア島の集会の夜、エドワードは、上院議員の娘クローバー(アンジェリーナ・ジョリー)とはずみでベッドイン。クローバーが妊娠したことから、彼女と結婚する道を選ばざるをえなくなる。その挙式当日に、サリヴァン将軍の使者から海外赴任命令を受けたエドワードは、1週間後、戦略事務局(OSS)の一員としてロンドンへ旅立った。

冷たい戦争の始まり
 ロンドンに到着早々、英国情報部の下で働き始めたエドワードは、そこで思いがけない人物と再会する。フレデリックス教授だ。ナチス協力者のレッテルを貼られてイエール大学を追われた教授は、実は英国の諜報員だったのだ。そんな彼の指導を受け、情報操作のノウハウを学ぶエドワード。同時に彼は、英国情報部のアーチ・カミングス(ビリー・クラダップ)が、お荷物になった教授の始末に動くのを目の当たりにして、諜報活動に不可欠な非情さも学ぶことになった。
 5年後。終戦と共にベルリンへ移り、亡命希望者の処理にあたっていたエドワードは、通訳を務めるドイツ人女性のハンナ(マルティナ・ゲデック)と親しくなる。エドワードがハンナに心ひかれたのは、補聴器をつけた彼女にローラの面影を見出したからだった。が、ある時、エドワードは気づく。ハンナの補聴器が、彼の気をひくための飾り物であったことに。ハンナは、アメリカと競って優秀な科学者を自国に亡命させようとしていたソ連に雇われたスパイだったのだ。エドワードの胸に苦い思いを残したこの出来事は、彼にとって冷戦時代の始まりを肌で感じさせるものとなった。

再会
 1946年、アメリカに帰国したエドワードは、これまで電話で話したことしかなかった息子のエドワード・ジュニアと初めて顔を合わせた。エドワードが手作りした帆船の模型をプレゼントされ、戸惑いと喜びが入り交じった表情を浮かべるエドワード・ジュニア。一方、エドワードと妻クローバーの再会もぎこちないものになった。エドワードが不在の間に、寂しさのあまり一度だけ別の男性と付き合ったクローバーは、そのことを自らエドワードに告白。過去を忘れ、あらためて幸せな家庭を築き直そうと、エドワードに申し出る。
 しかし、実際の結婚生活は、クローバーが望んでいたものとかけ離れたものになった。OSSの流れを汲んで作られたCIAで諜報員として働き始めたエドワードは、家庭を顧みる暇もなく仕事に没頭。秘密主義を貫く彼のせいで友達付き合いもままならなくなったクローバーは、ストレスをつのらせ、酒に溺れていく。
 1958年。ソ連から亡命したKGBの大物、ヴァレンティン・ミロノフ(ジョン・セッションズ)と共に、チェーホフの「桜の園」の芝居を見に行ったエドワードは、劇場で思いがけなくローラと再会する。いまだに独身だという彼女は、昔の溌剌とした魅力を少しも失っていなかった。その夜から、頻繁に密会を重ねるようになった2人。だが、何者かが撮影した情事の写真がクローバーの元に届けられたことから、エドワードは、ローラに二度目の別れを告げざるをえなくなった。

組織と家族——ふたつの❝ファミリー❞
 1960年。エドワードは、自分と同じくイエール大学に進み、スカル&ボーンズの一員として大学生活を送った息子(エディ・レッドメイン)から、リクルートされてCIAに入るという話を聞かされる。「誇りに思ってほしい」と目を輝かせる息子の言葉に、複雑な表情を浮かべるエドワード。一方、息子だけはCIAと無縁の生活を送ってほしいと願っていたクローバーは、「不採用になるようにはからってくれ」とエドワードに懇願する。そんな彼女と口論になったあげく、「君と結婚したのは子供ができたからだ」と口走ってしまうエドワード。その瞬間、20年あまりにわたる2人の偽りの結婚生活は完全に終わりを告げた。クローバーは、エドワードと別居し、フェニックスで母親と暮らす道を選ぶ。
 1961年。クローバーは去り、諜報員となった息子は海外へ赴任。いまや1人きりになったエドワードにとっては、CIAの仲間だけが”家族”と呼べる存在だった。とはいえ、ピッグス湾侵攻作戦の失敗が内部の情報漏れによって引き起こされた以上、”家族”といえども信用することはできない。ひとつだけ確かなのは、敵が誰かということだった。終戦から15年以上にわたって、エドワードと腹のさぐりあいを演じてきたソ連の諜報員スタス・シヤンコ(オレグ・ステファン)。”ユリシーズ”のコードネームで知られる彼こそが、今回のCIAの情報漏洩を仕組んだ黒幕であることは明白だった。

最も恐れていた真実
 エドワードの予測は的中した。写真とテープの分析結果にもとづいてコンゴへ出向いたエドワードは、そこで彼を待ちかまえていたシヤンコと対面する。シヤンコの口から語られたのは、キューバ侵攻部隊がピッグス湾に上陸するという極秘情報をソ連側に漏らしたのが、女性スパイと恋におちたエドワード・ジュニアだったという恐るべき真実だった。
 「息子さんを守ろう。その代わりあなたに協力してほしい」
 シヤンコの申し出に、エドワードの心は揺れる。しかし、女性スパイの素性に何の疑いも抱いていない息子から、彼女に結婚を申し込んだと聞かされるにおよび、エドワードの腹は決まった。敵のスパイを家族の一員に迎えることは、何としても阻止しなければならない……。
 アメリカへ戻ったエドワードを、もうひとつのショッキングな”裏切り”が待ち受けていた。長年友人として付き合ってきたミロノフが、ソ連の二重スパイであることが判明したのだ。しかも彼の黒幕は、戦時中から親しくしていたカミングスだった。ソ連に亡命したカミングスと電話で会話を交わすエドワード。自身が働いた裏切りによって、祖国も友も失ったカミングスの孤独を電話線越しに感じながら、エドワードは、自分の心も同じような孤独に侵されていると感じる。

決断
 エドワード・ジュニアの結婚式の日。コンゴへ出向いたエドワードは、人生の門出の日を迎えた息子とクローバーに、花嫁の訃報をもたらす役目を負うことになった。「息子に何をしたの?」と、半狂乱になって叫ぶクローバー。一方、花嫁がCIAによって暗殺されたと悟ったエドワード・ジュニアは、「彼女は妊娠していた」とエドワードに告げる。自らの決断によって孫の命を奪ったと知ったエドワードは、贖罪の気持ちをこめて、ただ息子を抱きしめるしかなかった。

ひとつの時代の終焉
 米ソ冷戦の舞台が地上から宇宙へと移りゆく中で、CIAも変革の時を迎えていた。裏金の発覚によってアレンが辞任。後任の長官には、スカル&ボーンズの先輩にあたるリチャード・ヘイズ(リー・ペイス)が就任し、エドワードは敵対諜報部門の責任者に任命された。しかし、彼の心に喜びはなく、空しさが広がるだけ……。
 そんなある日エドワードは、30数年間金庫にしまい続けてきた父の遺書を、意を決して開封する。そこには、国、家族、自分の名誉を傷つけたことを恥じて死んでいった男の懺悔の言葉が並んでいた。
 「息子には、勇気ある人間、良き夫、良き父になってほしい。どんな人生を選ぶにせよ、満ち足りた人生を送ってほしい。そして、夢が叶うことを願っている」
 遺書を読み終えたエドワードは、その紙を燃やした。国への忠誠を守り通したがゆえに、父に望まれたとおりにはならなかった自分自身の人生の皮肉に、静かに思いを馳せながら……。

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